このワークブックの使い方
「DX しなきゃ」と分かっていても、何から手をつけるかで詰まる。これは、多くの中小企業に共通する詰まり方です。
理由はシンプルで、自社の業務がどうなっているかを、まだ言葉にできていないからです。
ベンダーや SaaS の話を聞いても、自社業務の地図がないと、それが自分に必要なものかが判断できません。だから「とりあえず聞く」「とりあえずデモを見る」が続いて、決まりません。
このワークブックは、自社業務の地図を 7ステップで作るためのものです。書き込むワークシートをつけてあります。コピーして、紙に書いてもいい。Excel / Google Sheets でもいい。
完璧を目指さなくて構いません。8割の精度の地図でも、ベンダー会話の質は劇的に変わります。
ステップ全体像
| Step | 内容 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 1 | 業務をすべて書き出す | 30分 |
| 2 | 業務を「ルーチン度」で 3群に分ける | 15分 |
| 3 | 業務に「人件費の量」を当てる | 20分 |
| 4 | 業務に「定型度」を当てる | 20分 |
| 5 | マトリクス上に配置します | 15分 |
| 6 | 優先順位を 3つに絞る | 10分 |
| 7 | 各優先業務に「次の 1歩」を書く | 10分 |
合計 約 2時間。1日でやるか、何回かに分けるかは、現場の集中力次第です。
STEP 01業務をすべて書き出す(30分)
自社で日常的に発生する業務を、できるだけ細かく書き出します。
- 「動詞ベース」で書く。「営業」ではなく「アポを取る」「見積を作る」「請求書を出す」のように分解します。
- 1業務 = 1行。長い文章は避ける。
- 完璧を求めない。「あれも書こうか」と迷ったら書く。後で消せばいい。
目標: 30〜 80行くらいになるのが普通です。10行で終わったら、まだ抜けがあります。
| No | 業務名 | 部門 / 担当 |
|---|---|---|
| 01 | ||
| 02 | ||
| 03 | ||
| ... |
部門 / 担当は「営業」「経理」「製造」「自分」など、ざっくりで構いません。あとで集計しやすくするためです。
STEP 02業務を「ルーチン度」で 3群に分ける(15分)
書き出した業務を、次の 3群のどれかに分類します。
- A. 毎日・毎週やる業務(定常) — 例: メールチェック、日報、定例会議
- B. 月次・四半期でやる業務(周期) — 例: 月次レポート、給与計算、棚卸し
- C. プロジェクト単位・スポットの業務(変動) — 例: 新商品開発、年次キャンペーン、採用面接
各業務の右端に A / B / C を付けるだけです。
なぜこれをやるか: ルーチン度が高い業務(A / B)ほど、デジタル化・自動化の費用対効果が出やすいからです。C は手作業のままでも問題ないことが多い。
STEP 03業務に「人件費の量」を当てる(20分)
各業務に、月あたりの所要時間を概算で書きます。複数人でやっている業務は、合計時間で構いません。
書き方の例:
- 「メールチェック」: 自分で 1日 1時間 × 月 20営業日 = 20時間/月
- 「月次レポート」: 経理 1人 × 1日 = 8時間/月
- 「新商品開発」: チーム 3人 × 2週間 = 240時間/年 → 20時間/月
精度は不要です。「これぐらい?」で OK。
| No | 業務名 | ルーチン度 | 月あたり時間 | 担当者数 |
|---|---|---|---|---|
| 01 | メールチェック | A | 20h | 1 |
| 02 | 月次レポート | B | 8h | 1 |
| ... |
STEP 04業務に「定型度」を当てる(20分)
各業務に対して、次の質問に答えます:
「この業務は、毎回ほぼ同じ手順か?それとも毎回違う判断が要るか?」
5段階で評価:
- 5 (定型): 毎回同じ。マニュアル通り。
- 4: 9割は同じ。
- 3: 半分はパターン、半分は判断。
- 2: 毎回違うが、傾向はあります。
- 1 (非定型): 毎回ゼロから判断。
コツ: 「自分以外の人に任せられるか」を聞いてみる。
- 「マニュアル渡せば誰でもできる」→ 5 / 4
- 「人に説明するのが難しい」→ 1 / 2
| No | 業務名 | ルーチン度 | 月時間 | 定型度 (5-1) |
|---|---|---|---|---|
| 01 | メールチェック | A | 20h | 4 |
| 02 | 月次レポート | B | 8h | 5 |
| 03 | 新商品開発 | C | 20h | 1 |
| ... |
STEP 05マトリクス上に配置する(15分)
縦軸に「月あたり時間」、横軸に「定型度」をとったマトリクスに、各業務を配置します。
各業務を 4つの象限のどれかに配置します:
- 象限 I (上左): 月の時間が多く、かつ定型度が高いです。→ デジタル化・自動化の最有力候補
- 象限 II (上右): 月の時間が多く、定型度が低い。→ 自動化は難しいが、AI が判断補助できる可能性
- 象限 III (下左): 月の時間が少なく、定型度が高いです。→ 今のままで OK。優先度低い
- 象限 IV (下右): 月の時間が少なく、定型度が低い。→ 属人化リスク。マニュアル化が先
STEP 06優先順位を 3つに絞る(10分)
象限 I の業務から、デジタル化・自動化に取り組む 3つを選びます。
選び方の基準:
- 失敗しても影響が小さい業務(社内向け、ミスしても致命的でないもの)
- やった結果がすぐ見える業務(毎日・毎週のもの)
- 担当者が変化を歓迎している業務(嫌々やっている業務は、自動化提案も歓迎される)
| 優先順位 | 業務名 | 月時間 | 期待効果 |
|---|---|---|---|
| 1 | |||
| 2 | |||
| 3 |
STEP 07各優先業務に「次の 1歩」を書く(10分)
選んだ 3業務それぞれに対して、今月中にできる 1歩を書きます。
1歩の例:
- 「現状の手順を録画する(Loom や Zoom で)」
- 「使っているツール・データの一覧を作る」
- 「業界の同種事例を 3件探す」
- 「ベンダーを 2社、デモ依頼する」
- 「社内で 1時間、改善案を雑談する」
「導入する」は 1歩ではありません。1歩は、もっと手前です。
| 優先順位 | 業務名 | 今月の 1歩 | 担当 | 期限 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ||||
| 2 | ||||
| 3 |
よくある詰まりどころと対処
問題ありません。むしろ良い兆候です。Step 2-4を進めると、優先順位が自然に絞られます。
「全部が判断業務」と感じる業種では普通です。その場合、象限 II の業務を 1つ選んで Step 3をもう 1度やり、業務を「準備」「判断」「実行」に分解してみてください。「準備」と「実行」は意外と定型化できます。
「失敗しても影響が小さい」基準で機械的に選んでください。後から入れ替えられます。3つ並べないと、結局どれも進みません。
「現状を録画する」「ベンダーにデモ依頼する」「同業他社の事例を 3件探す」のどれかで OK です。完璧な 1歩は要りません。
このワークブックを終えたあと
3ヶ月後にもう 1度同じワークをやると、マトリクスの配置が変わっているはずです。「象限 I だと思っていたら II だった」「象限 III だったが、急に時間が増えて I に来た」など、業務の実態が見えてきます。
DX は 1回でゴールに着く類のものではありません。半年に 1度、業務地図を更新する習慣がつくと、それ自体が「DX が回っている状態」になります。
そして、AI 時代にも DX の現場でも、私たちが忘れないことがあります。AI は指示通りを最短で仕上げる道具。案が出た後、「本当にこれが優先か」「もっと良い切り口はないか」を追いかけるのは、いつも人間の仕事です。この執念、成果物に乗り移る「魂」の部分だけは、AI が速くなっても代替されません。DX が「回っている状態」の正体は、この追いかけを止めない姿勢のことだと考えています。
「ワークを進めてみたが、ここから先がわからない」と感じたら
リフレックス・ラボでは、このワークブックを用いた DX 入門研修・業務棚卸し伴走を行っています。
- DX 入門研修(単発 10万円〜 / 回)
- 業務棚卸しからの DX 戦略立案(プロジェクト 20万円〜)
- 月額伴走サポート(月 5万円〜)
初回 30分は無料 / Zoom で承ります。「概算だけ知りたい」段階のご相談も歓迎します。
無料相談を申し込む