reflex-lab Co., Ltd. / WHITEPAPER
WP-01

20年の現場が見つけた、
AI × デザインを混ぜる 5つの原則

中小企業 / スポーツ / 出版の現場で生まれた、ありふれない AI 活用の手の動かし方。

対象
自社で AI を使ってみたいが、何から手をつければ良いか分からない経営者・現場責任者
読了時間
約 12分
著者
有限会社リフレックス・ラボ 代表取締役 澤田洋佑
初版
2026年 6月

はじめに

「AI でなんでもできる」「AI が仕事を奪う」「AI なしでは生き残れない」

2024年以降、こうした見出しが新聞・ビジネス誌・SNS に並びました。私たちもこの 2年間、生成 AI を毎日業務で使う中で、見出しが半分は正しく、半分は危ういことを実感しています。

私たちは 2005年から 20年、デザイン事務所として現場に立ってきました。スポーツ、出版、自治体、中小企業。1日も同じ現場はなく、毎日違うクライアントの「らしさ」とぎりぎりまで向き合う仕事です。

そこに AI を入れたとき、何が変わり、何が変わらないのか。
自社プロダクト 2本(運用中:47storiesJP / 開発中:ひじきのごはん bot = AI VTuber「ひじき」)と数十件のクライアント案件で試行錯誤して見えてきた、5つの実践原則をまとめます。

煽りも美化もしません。「明日の業務で 1つ試してみよう」と思えるところを目指します。

原則 01AI は「道具」であって、「判断」ではない

ChatGPT に「うちのロゴ案を出して」と頼むと、それらしい案が 10個出てきます。Midjourney に画像を作らせれば、見栄えのする絵が出てきます。問題はその先です。

AI の出力には、お客様の事業や、業界の慣習や、納期や予算の制約が反映されていません。

例えば、スポーツチームのロゴ。プロ野球の場合、リーグ規定で使えない色があります。地元の小学校の校章と被ってはいけない。グッズ展開を想定したら、メッシュ素材で潰れない線の太さが必要——こうした制約は、AI は知りません。学習データの中にあったとしても、その案件に当てはまるかは判断できません。

判断は、現場に立っている人間がします。AI は、その判断をするための選択肢を「量」で支えます。

実践のコツ
  • AI に「決めさせない」。選択肢を増やすために使う。
  • 10案出させたら、まず人間が 7案を捨てる。捨てる理由を言語化します。
  • その理由が、次回 AI に渡すプロンプトの精度を上げる。

原則 02「量」がボトルネックの作業と、「質」がボトルネックの作業を分ける

私たちの仕事を観察すると、ある仕事は「量」が詰まっていて、別の仕事は「質」が詰まっています。

量がボトルネックの作業(AI に任せやすい)

これらは「量」さえ揃えば、人間が選別すれば済む作業です。AI が向いています。

質がボトルネックの作業(人間がします)

これらは AI が出力した時点で「もう作業の質が決まっている」性質のものです。AI に任せても、結局やり直しになる。

実践のコツ
  • 自社の業務を「量」と「質」で 2列に分けて書き出す。
  • 「量」列の上位 3つから AI で試す。失敗してもダメージが少ない。
  • 「質」列に手を出すのは、量列での AI 活用が回り始めてから。

原則 03AI 出力を 100% にしません。80% で止めて、最後 20% は人間の手で

AI で文章を書かせると、「読める」状態のものが出てきます。画像を作らせると、「見栄えのする」絵が出てきます。それを「完成」と思った瞬間、AI を使った仕事は崩れます。

理由は 3つ

  1. AI 出力は平均化される。学習データの「中間値」が出てくる。だから読みやすいし、見やすい。でも、その「中間値」は、あなたのブランドや文脈とは無関係です。
  2. 固有名詞・最新情報・社内事情は AI が知りません。クライアントの担当者名、先週の会議で決まったこと、競合他社が来月リリースする情報——これらが反映されないまま「完成形」に見えてしまうと、後で気づいて差し戻しになります。
  3. 「らしさ」は最後の 20% に宿る。なぜこの色か、なぜこの言い回しか、なぜこの構図か。理由を語れる部分は、人間の手で入れたものです。
実践のコツ
  • AI 出力の段階で「これで 8割」と意識的に止めます。
  • 残り 2割は何を入れるか、リストにする(固有名詞 / 文脈 / 倫理判断 / 「らしさ」など)。
  • 公開前にそのリストでチェックします。

原則 04道具を 1つに絞りません。複数の AI を組み合わせる

ChatGPT が出てきたとき、「これ 1つでいい」と思った人が多かったはずです。実際は、半年で Claude が来て、Gemini が来て、画像生成も Midjourney / DALL-E / Imagen / Stable Diffusion と並列で進化しました。サービス側の都合(廃止・統合・有料化)で使えなくなる道具も毎月のように出ます。

1つの道具に最適化すると、その道具のバージョンアップやサービス終了に振り回されます。

reflex-lab の制作現場で実際に使っている組み合わせ(2026年時点)は以下です。サービスの統廃合で月単位で構成が変わるため、ここは現時点のスナップショットです。

用途 主に使う道具 サブとして併用
対話・原稿・コード生成Claude(Claude Code / Obsidian Claudian)ChatGPT
コードレビュー・第二意見Codex CLIClaude
画像生成(量産・スタイル探索)MidjourneyChatGPT 画像生成
ローカル AI 実装(自社プロダクト)Gemma 2-2B + LoRA + RAG(FAISS) + Style-Bert-VITS2 + Live2D (ひじきのごはん bot 構成)
素材整理・要点抽出ChatGPTClaude

すべてを毎日使うわけではありません。「この仕事はこの道具」という対応表を、案件ごとに更新しながら持っています。新しい道具が出たら、まず影響の小さい小タスクで 1回触り、続けるかを決めます。

実践のコツ
  • 月 1で「先月、何の仕事を、どの AI でやったか」を 1行ずつ書き出す。
  • 半年すると、自社固有の対応表ができます。
  • 新しいツールが出たら、1件の小さな仕事で試す。本格導入は 3ヶ月後でも遅くない。

原則 05「使う側」になる時間を、毎月決めて確保します

私たちが社内で実践していることが、これです。

「お客様の AI 提案をする」のと「自分で AI を使う」のは別の能力です。提案だけしている人は、半年で AI の話に追いつけなくなります。理由は、AI が毎週変わるからです。論文や記事を読むだけでは、追いつけません。

そこで私たちは、月 N 時間は「使う側」の時間を確保することにしました。具体的には:

これは「研究時間」ではなく「業務時間」として扱います。研究は終わらないけれど、業務なら期限と成果物があります。

そして、忘れないようにしていることが 1つあります。AI は指示通りを最短で仕上げる道具にすぎません。「案が出た」時点で満足するのは AI 側の話。人間の仕事は、そこから先にあります。

写真でもイラストでも成立すると分かってから、もっと良い素材はないかを探しに行く。もう一段掘れないかを考える。

この執念と「魂」の部分が成果物にわずかに乗り移ったとき、受け取り手のなかに「なんかわからないけど、いいものだな」という感覚が生まれたりする——これが AI では代替できない領域です。私たちが「使う側」の時間を毎月確保しているのは、AI が速く仕上げた分だけ、人間が追いかける時間を作るためでもあります。

実践のコツ
  • 「使う側」時間を、まず月 4時間(週 1時間)から始めます。
  • 動かす対象は、社内の人だけが見るものから始める(失敗しても被害が小さい)。
  • 3ヶ月続いたら、月 8時間に増やす。1年続いたら、月 16時間に増やす。

では、何から始めるか

5つの原則を読んでも、明日の仕事は具体的に変わりません。だから、最初の 1歩を絞ります。

  1. Step 1(今週中): 自社の業務を「量」「質」で 2列に書き出す(原則 2)
  2. Step 2(今月中): 「量」列の上位 1つを、AI で試す。失敗しても OK な業務から始める(原則 1 + 3)
  3. Step 3(3ヶ月以内): 試したことを 1ページ 1件で残す。何を試した / 何が出た / どう判断した(原則 3の蓄積)
  4. Step 4(半年以内): 自社の AI 道具対応表を作る(原則 4)
  5. Step 5(1年以内): 「使う側」時間を月 4時間から始める(原則 5)

「やってみたいが、社内に詳しい人がいない」と感じたら

リフレックス・ラボでは、本資料の 5原則を実際の業務で回している伴走サポートを行っています。
初回 30分は無料、Zoom で。「概算だけ知りたい」段階のご相談も歓迎します。

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