DX、何から始める?業務棚卸し 30分版
「DX しなきゃ」と分かっていても、何から手をつけるかで詰まる中小企業は多いです。
詳細版は当社の DX 業務棚卸しワークブック(2時間)にまとめていますが、まず 30分で大まかな地図を作る簡易版を、この記事で公開します。
なぜ「業務の地図」が必要か
多くの中小企業が、DX で詰まる原因はだいたい同じです。自社の業務がどうなっているかを、まだ言葉にできていないのです。
ベンダーや SaaS の話を聞いても、自社業務の地図がないと、それが自分に必要なものかが判断できません。だから「とりあえずデモを聞く」「とりあえずセミナーに行く」が続いて、何も決まりません。
30分で完璧な地図はできませんが、「だいたいこんな感じ」の輪郭は描けます。これだけで、ベンダー会話の質は劇的に変わります。
ステップ 1: 業務を箇条書きにする(10分)
紙か Google Docs を開いて、自社で日常的に発生する業務を、できるだけ細かく書き出します。
- 「動詞ベース」で書く。「営業」ではなく「アポを取る」「見積を作る」のように分解
- 1業務 = 1行。長い文章は避ける
- 完璧を求めない。「あれも書こうか」と迷ったら書く
- 目標は 30〜 50行。10行で終わったら、まだ抜けがあります
たとえば製造業の中小企業なら、こんな書き出しになります:
- 受注の電話を受ける
- 見積を作る
- 原材料を発注する
- 製造ラインを動かす
- 検品する
- 請求書を出す
- 入金を確認する
- ...(30-50行)
ステップ 2: 「量」と「定型度」で分類(10分)
書き出した業務を、2つの軸で評価します。
軸 1: 月の時間(量)
- 多い: 月 20時間以上(毎日やる業務)
- 中: 月 5〜 20時間(週 1〜 数回)
- 少ない: 月 5時間以下(月 1〜 2回)
軸 2: 定型度
- 高: マニュアルがあれば誰でも同じ結果になります
- 中: 半分はパターン、半分は判断
- 低: 毎回ゼロから判断します
このマトリクスに、各業務を配置します:
象限 I(量×定型)が、DX・自動化・AI 活用の最有力候補です。月の時間が多く、かつパターン化されている業務は、コンピュータが得意な領域です。
ステップ 3: 1つだけ選ぶ(5分)
象限 I に置いた業務の中から、1つだけ選びます。
- 失敗しても影響が小さい業務(社内向け、ミスしても致命的でないもの)
- すぐ結果が見える業務(毎日・毎週のもの)
- 担当者が変化を歓迎している業務(嫌々やっている業務は、改善提案も歓迎される)
「全部やりたい」と思っても、最初は 1つだけです。複数を同時に手をつけると、どれも中途半端に終わります。
ステップ 4: 「1歩」を書く(5分)
選んだ業務に対して、今月中にできる 1歩を書きます。
「導入する」は 1歩ではありません。「1歩」はもっと手前です。
- 「現状の手順を録画する(Loom や Zoom で)」
- 「使っているツール・データの一覧を作る」
- 「業界の同種事例を 3件探す」
- 「ベンダーを 2社、デモ依頼する」
- 「社内で 1時間、改善案を雑談する」
30分でやってみて、次にどうするか
30分で大まかな地図ができました。次は何をするか。
- 1歩を実行します。今月中に、書き出した 1歩だけは必ずやります。
- 振り返る。1ヶ月後に、結果がどうだったかを 5分で書き出す。
- 詳細版に進む。30分版で「もっとちゃんと整理したい」と思ったら、詳細版(2時間)の DX 業務棚卸しワークブック をどうぞ。
よくある詰まり 3つ
業務が多すぎて、全部書けない
30分版では「思いつくものだけ」で OK です。漏れがあっても、最も時間を取られている業務は記憶に残っているはず。完璧な棚卸しは、詳細版で。
全部が「判断業務」に見えます
「全部が判断業務」と感じる業種は珍しくありません。その場合、各業務を「準備」「判断」「実行」に分けてみてください。「準備」と「実行」は意外と定型化できます。「判断」だけが本当に判断業務です。
「1歩」が思いつきません
「現状を録画する」「ベンダーにデモ依頼する」「同業他社の事例を 3件探す」のどれかで OK です。完璧な 1歩は要りません。動き出すことが大事。
まとめ
DX は 1回でゴールに着く類のものではありません。半年に 1度、業務地図を更新する習慣がつくと、それ自体が「DX が回っている状態」になります。
30分で地図を描いてみて、何か発見があれば、その続きを当方と一緒にやりましょう。
そして、DX の現場でも AI の使いどころは同じです。AI は「30分の地図を作る」までを速くこなします。そこから先、「本当にこれが優先か」「別の切り口はないか」「もっと事業目的に近い形はないか」を追いかけるのは、いつも人間の仕事。この執念の部分は、AI がどれだけ速くなっても代替されません。DX が「回っている状態」の正体は、この追いかけを止めない姿勢のことだと考えています。