2025.09.15 · IT コンサル · 読了 8分 · 澤田洋佑

DX、何から始める?業務棚卸し 30分版

「DX しなきゃ」と分かっていても、何から手をつけるかで詰まる中小企業は多いです。
詳細版は当社の DX 業務棚卸しワークブック(2時間)にまとめていますが、まず 30分で大まかな地図を作る簡易版を、この記事で公開します。

なぜ「業務の地図」が必要か

多くの中小企業が、DX で詰まる原因はだいたい同じです。自社の業務がどうなっているかを、まだ言葉にできていないのです。

ベンダーや SaaS の話を聞いても、自社業務の地図がないと、それが自分に必要なものかが判断できません。だから「とりあえずデモを聞く」「とりあえずセミナーに行く」が続いて、何も決まりません。

30分で完璧な地図はできませんが、「だいたいこんな感じ」の輪郭は描けます。これだけで、ベンダー会話の質は劇的に変わります。

ステップ 1: 業務を箇条書きにする(10分)

紙か Google Docs を開いて、自社で日常的に発生する業務を、できるだけ細かく書き出します。

コツ
  • 「動詞ベース」で書く。「営業」ではなく「アポを取る」「見積を作る」のように分解
  • 1業務 = 1行。長い文章は避ける
  • 完璧を求めない。「あれも書こうか」と迷ったら書く
  • 目標は 30〜 50行。10行で終わったら、まだ抜けがあります

たとえば製造業の中小企業なら、こんな書き出しになります:

ステップ 2: 「量」と「定型度」で分類(10分)

書き出した業務を、2つの軸で評価します。

軸 1: 月の時間(量)

軸 2: 定型度

このマトリクスに、各業務を配置します:

高 ↑ │ │ [I] 自動化候補 [II] 人がやる 月 │ (量×定型) (量×判断) 時 │ ←─── ここから手を ──→ 間 │ つける │ │ [III] そのまま [IV] 標準化候補 │ (少量×定型) (少量×判断) 低 │___________________________________ 定型 ←───── 定型度 ─────→ 非定型

象限 I(量×定型)が、DX・自動化・AI 活用の最有力候補です。月の時間が多く、かつパターン化されている業務は、コンピュータが得意な領域です。

ステップ 3: 1つだけ選ぶ(5分)

象限 I に置いた業務の中から、1つだけ選びます。

選び方の基準
  1. 失敗しても影響が小さい業務(社内向け、ミスしても致命的でないもの)
  2. すぐ結果が見える業務(毎日・毎週のもの)
  3. 担当者が変化を歓迎している業務(嫌々やっている業務は、改善提案も歓迎される)

「全部やりたい」と思っても、最初は 1つだけです。複数を同時に手をつけると、どれも中途半端に終わります。

ステップ 4: 「1歩」を書く(5分)

選んだ業務に対して、今月中にできる 1歩を書きます。

「導入する」は 1歩ではありません。「1歩」はもっと手前です。

1歩の例
  • 「現状の手順を録画する(Loom や Zoom で)」
  • 「使っているツール・データの一覧を作る」
  • 「業界の同種事例を 3件探す」
  • 「ベンダーを 2社、デモ依頼する」
  • 「社内で 1時間、改善案を雑談する」

30分でやってみて、次にどうするか

30分で大まかな地図ができました。次は何をするか。

  1. 1歩を実行します。今月中に、書き出した 1歩だけは必ずやります。
  2. 振り返る。1ヶ月後に、結果がどうだったかを 5分で書き出す。
  3. 詳細版に進む。30分版で「もっとちゃんと整理したい」と思ったら、詳細版(2時間)の DX 業務棚卸しワークブック をどうぞ。

よくある詰まり 3つ

業務が多すぎて、全部書けない

30分版では「思いつくものだけ」で OK です。漏れがあっても、最も時間を取られている業務は記憶に残っているはず。完璧な棚卸しは、詳細版で。

全部が「判断業務」に見えます

「全部が判断業務」と感じる業種は珍しくありません。その場合、各業務を「準備」「判断」「実行」に分けてみてください。「準備」と「実行」は意外と定型化できます。「判断」だけが本当に判断業務です。

「1歩」が思いつきません

「現状を録画する」「ベンダーにデモ依頼する」「同業他社の事例を 3件探す」のどれかで OK です。完璧な 1歩は要りません。動き出すことが大事。

まとめ

DX は 1回でゴールに着く類のものではありません。半年に 1度、業務地図を更新する習慣がつくと、それ自体が「DX が回っている状態」になります。

30分で地図を描いてみて、何か発見があれば、その続きを当方と一緒にやりましょう。

そして、DX の現場でも AI の使いどころは同じです。AI は「30分の地図を作る」までを速くこなします。そこから先、「本当にこれが優先か」「別の切り口はないか」「もっと事業目的に近い形はないか」を追いかけるのは、いつも人間の仕事。この執念の部分は、AI がどれだけ速くなっても代替されません。DX が「回っている状態」の正体は、この追いかけを止めない姿勢のことだと考えています。

業務棚卸しからのご相談

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